「BGMも準備しておいた方がいいよね」
「カラオケなんかどーだ?」

「ふっふっふっ、あれを忘れてはなるまい、やおい同人誌! 俺は、一輝・瞬を中心に、腐るほど持っている」
勝ち誇ったように告げる紫龍に、氷河が思い切り嫌そうな顔を向ける。
「……なんで、おまえがそんなものを持っているんだ」
「おまえの嫌がる顔が見たいからだ」

期待通りに不愉快極まりない氷河の顔を見ることができて、紫龍は満足気だった。


「あ、俺さー、紫龍と俺のなら持ってる。送ってくれる人がいるんだよなー。あと、俺と瞬、俺と一輝。なんでだか、俺と氷河のはないんだけどさ」
「あってたまるか! ふん。ならば、俺は、俺と瞬の超ハードやおい本を山ほど提供するぞ」
「やだ、そんなもの持ってるの、氷河ってば」
「おまえは、さすがにそんなものは持っていないのか?」
「あ……兄さんと氷河の本を何冊か……」

瞬の言葉を聞いた氷河は、一瞬蒼白になり、次の瞬間、茹でダコのように真っ赤になった。
「どこにある! そんなもの、この世から抹殺してやるーっっ !! 」


氷河が大激怒している横で、そんな見慣れたものになど今更騒ぐ気もない瞬たちは、勝手に議事進行にいそしんでいた。

「同人誌の管理も難しいな。複数人の持ち寄りとなると、閲覧しているうちに所有者がわからなくなるかもしれないし、氷河みたいな奴が、許容できない同人誌の抹殺を試みるかもしれない」
「管理係を決めておけばいいよ」
「同人誌係に、会計係、プロジェクター等の機材係と、他に係を作っておいた方がいい仕事はあるか?」
「あ、俺、金勘定ダメだから、力仕事なーv」


なし崩し的に個別の担当も決まり、いよいよ、第一回聖域文化祭準備委員会の活動は表舞台へと飛び出すことになったのである。






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