さて。
黄金聖闘士たちは、実は――お祭り好きだった。


星矢たちの立てた看板に気付くや、聖域は突然日光江戸村に変貌を遂げた。
黄金聖闘士たちは、時代劇の脇役町人よろしく立て看板の前に群がって、わいわいがやがやと盛り上がり始めたのである。

「文化祭だと! 文化的な俺たちにぴったりの催し物だな!」
「青銅のガキ共も、少しは可愛げがあるな。俺の宮を見事にブッ壊してくれた恩は忘れようにも忘れられないが」
「皆が集まるのでしたら、私は、差し入れに人骨酒など持参しましょう。○×の生血の入った酒もありますが」
「では、私は、スジャータポタージュを持っていこう」
「私は美しい私にふさわしく、美しいバラのジャム」
「私はマムシ酒を持参することにしよう」
「アザラシの燻製」
「ちゃんぽん〜」
「カラスミ〜」
「俺は秘蔵の同人誌を隠し持っている。なんと、カミュ・一輝だっ!」
「酒さえありゃあ、文句はないっ」
「この上映会ってのは何だ? もしかして、えっちなナニかか? 参加するぞ、俺はっ」

黄金聖闘士たちが“文化”の意味を解しているのかどうかには、かなりの疑念があったが、青銅聖闘士たちが文化祭の企画を立ち上げてから、苦節1ヶ月。
参加希望者がいるのかどうかという懸念は杞憂に終わり、蓋を開けてみれば全員参加。

瞬たちの苦労(?)は、この瞬間、既に8割方報われていた。


「な……なんだか、ゴールドさんたち、喜んでくれてるみたい。よかった〜! ね、氷河。文化祭、企画してよかったね!」
「おまえが嬉しいなら、俺も嬉しい」

来ないと言い張る奴がいたら脅迫してでも参加させようと決意していた氷河も、思いがけないこの展開には、少々の安堵を覚えていた。

黄金聖闘士たちの祭り好きな性癖に、祭り嫌いな氷河も、この時ばかりは感謝の気持ちなど抱いてしまったのである。






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