「アンドロメダなら、もっとマシな相手がいくらでもいるだろう。よりにもよって、なぜキグナスなんだ……!」 ソレントの口調には、明確に妬心が含まれていた。 絵に描いたように、金持ちたちの計画が現実のものになっていく様を見せつけられた星矢が、内心で舌を巻く。 「まあ、それは……恋は盲目って言うじゃん」 「あら、そんなことはないわ。人を好きになると、少なくとも、その人の美点は良く見えるようになるものよ」 「氷河に、美点なんてあんのかー?」 「モノは知ってるぞ。瞬の辞書代わりだし、方位磁石代わりだし、計算機の代わりもできるらしいしな」 「でも、その能力を自分のために有効利用できないんじゃ、ただの馬鹿じゃん」 「してるじゃないか、思い切り」 氷河は、瞬にとって、なくてはならないものになっている。 確かに、氷河は、彼の持てる能力を最大限に有効活用していた。 「確かに」 星矢が素直に納得し、自分の意見を撤回する。 アテナとアテナの聖闘士たちの気楽この上ない意見交換は、ソレントの憤りをますます大きくした。 「まあ、氷河に美点があろうとなかろうと、この場合は関係ないでしょう。人は人の美点を好きになると限ったものじゃないわ。もしそうだとしたら、人は優れた人間に出会うたびに、好意の対象を別の人間に移していくことになるはずだもの。でも、現実はそうじゃないでしょ」 沙織の言葉に、紫龍と星矢は頷くしかなかった。 目の前にある事実は、何よりも強い力を有している。 しかし、今のソレントは、事実がそうだからといって、その事実をそのまま受け入れることはできなかった。 受け入れられない事実だったのである。氷河と瞬の関係は、ソレントにとって。 |