白いヴェールの向こう。
その向こうにあるはずの顔を、氷河は、確かめることはできなかった。
その前に、彼女の姿は、ゆっくりと薄れ、消え始めていた。

氷河が抱きかかえてる瞬の頬に、生気の輝きが戻ってくる。
その輝きが、氷河の命をも蘇らせた。


多くの人の魂のかけらが――その中には、亡くなった人のものも含まれていた――自分の中にあることを、氷河は感じていた。


氷河の魂を守る水晶の殻は、もう必要がない。
代わりに、新しく生まれたばかりの今日の太陽の光が、小さな村と広い世界とを包み始めていた。





Fin.







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