「これ……どういう意味だと思う?」 考えあぐねた末、瞬は紫龍と星矢に意見を聞いてみることにした。 氷河に尋ねるわけにはいかなかった。 そんなことをしたらまた、氷河は瞬を不粋と決めつけるに決まっている。 そう思われるだけならともかく、氷河は機嫌を損ねる。 瞬は、氷河には、いつもなるべく良い気分でいてほしかった。 たとえ氷河が、『風が吹けば桶屋が儲かる』的超論理のみで構成された思考回路の持ち主だったとしても、瞬にとって彼は大切な仲間だったのだ。 が、それで迷惑を被るのは、星矢と紫龍である。 氷河に比べれば極めて常識的な人間である彼等に、氷河の考えていることなど理解できるはずがないのだ。 「また、何か、氷河にだけ言わずもがなの意味はあるんだろうが……。花言葉あたりから何かわからないのか?」 「うん……。そう思って、調べてみたんだけど、鳳仙花の花言葉って、『私に触れないで』と『心を開く』なんだって。とりようによって、全然逆の花言葉でしょ。放っておいてくれって言ってるのか、心を開いてくれって言ってるのか、わかんなくて」 瞬が困ったように溜め息をつく。 氷河の超論理の標的にされている瞬に、紫龍は半ば同情するような視線を投げた。 「氷河が、おまえに放っておいてほしいと思うようなことをした覚えはないのか?」 「なくはないけど、それっていつものことだもの。氷河って、放っておくと、いつまでも起きてこないし、してほしいことを普通に意思表示しないから、色々構ってあげないと……」 「まあ、おまえの世話好きは今に始まったことじゃないしな。じゃあ、逆に、氷河が心を開いてほしいと思うようなことは? 何か隠し事でもしてるんじゃないのか、おまえ、氷河に」 「隠し事なんてしてないよ。だいいち、心を開いてほしいって思ってるのは、氷河じゃなくて、僕の方だもの。普通の日本語で、ちゃんと説明してほしいのは、僕の方」 「それもそうだ」 ──と、ここで納得してしまっては話が進まない。 しかし、それ以上氷河の意図を探ることは、ごく普通の思考回路しか持たない人間には、なかなか困難なことだった。 |