それにしても、瞬の言う、“俺に教えるべきでない秘密”とは何だ?
瞬の奴、俺に知られるとまずいような悪さでもしでかしたのか?

だいたい、最近の瞬は妙に生意気だ。
そこにいるだけで、俺を苛立たせる。
俺が何をしたわけでもないのにつんけんして、態度も刺々しい。
瞬は、あんな奴だったろうか?
いや、違う。
瞬はあんな奴じゃなかった。
瞬は──瞬は、いつからあんなふうになってしまったんだったろう──?

ほんの少し前まで、瞬に対する俺のイメージは、至って良好だった。
瞬は、それこそ俺や星矢なんかとは違って、細かいとこまで気がまわって、人当たりもやわらかくて、表情や口調も優しくて──何とゆーか、咲くのをためらってる白いバラの蕾のようだった。
それまでの闘いで、散々迷惑をかけた俺に嫌味のひとつも言わず、迷惑そうな顔も見せず──俺は瞬に好意さえ抱いていたと思う。

それが、この頃の瞬は、俺の顔を見るたびにぷいっと横を向き──それも、俺にわかるように、わざとらしく俺を避けて──俺を不愉快にさせる。

俺は、最初のうちは、俺の方が瞬の気に障るようなことをしてしまったんだろうと、殊勝にも思っていた。
だから、自分の言動を省みてみたりもしたんだ。
しかし、いくら考えても、俺には思い当たることがなかった。

俺が何かしでかしてしまったにしても、瞬がその理由を言ってくれていたら(その“理由”の内容にもよるが)、俺だってこんなに嫌な気分になることはなかっただろう。
だが、現実には瞬は、その理由を言わずに、俺に剣突けんつくを食わせ始め、当然の帰結として、俺は不快になった。

そこにもってきて、“俺には教えられない秘密”だ。
俺に気にするなと言う方が無理な話だった。






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