瞬は、よほど驚いたのだろう。
絡んでいく俺の舌に抵抗もしなかった。
俺を散々苛立たせてくれた瞬は、こうして見ると、細くて小さいほんの子供だった。
こんな小さい子供に翻弄されていた俺自身が奇異に思えるほどに。

俺が瞬の唇を解放した後も、瞬は、怒りや不快の表情を見せなかった。
俺をなじりもせず、ただひどく不思議そうな目をして、俺をまじまじと見詰め返している。

「何のつもり」
「……俺の秘密を」
掠れた声で、俺が言う。
こんな状況で、まだそんなことにこだわっている自分を、それこそ俺は、どこかおかしいんじゃないかと訝っていた。

俺のその言葉を聞いた瞬が、急に眉を吊りあげる。
「まだわからないの? わかってないのに、こんなことしたの?」

そして、瞬は突然、怒りをあからさまにして、俺の肩を押しのけようとした。
「どいてよ。あっちに行って! 二度とこんなことしないで。ああ、もう、氷河って最低!」

俺は──俺は、その時、どうかしていたに違いない。
瞬の乱暴な口調にかっとなったにしても──それにしても、その後に俺がしでかしたことは、尋常なことじゃなかった。

俺は、俺を押しのけようとする瞬の手を鬱陶しげに払いのけ、瞬が身に着けていた服を引き剥いだ。
聖闘士のそれとも思えない薄い胸──が露わになる。
俺を散々揶揄してくれた瞬の身体は、まだほんのガキのそれだった。
引きつけられるように、瞬の白い胸に唇を這わせる。

「何するんですかっ! 馬鹿なことはやめてっ!」
瞬の罵倒なんか、もうまともに聞くものか。
そんなものを、いちいち真に受けていたら、俺はこの子供に苛々させられるだけだ。

──その時、俺の握力は300kgは出ていたに違いない。






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