俺は、瞬を知っている。
瞬は、頭を下げれば、あんな無体をした男も許してくれる奴だ。
瞬は、それが自分に対して為されたものなら、どんな過ちもどんな残酷も許さずにいられない、心優しいかわいそうな審判者だ。

なのに。
それがわかっていながら、卑怯な俺は言うんだ。
「すまなかった」

案の定、瞬は微かに首を横に振った。
そして、小さな声で言った。
「意地を張ってた僕が悪いんだ。ごめんね、氷河」

瞬が悪い?
そんなわけがないのに──。


俺は、俺を知らない。
知っているのは、俺が過ち多い愚かな人間だということだけだ。

だが、これだけは確かな未来として、確信できる。
俺は一生、この健気で可愛らしい生き物から逃れられないだろう。






Fin.






【back】