「戦の無意味でも、平和の価値でも、思いきり演説してくるんだな。神の意を汲んだ主張なら、皆にも受け入れられるだろう」
ヒョウガはそう言って、ニキアスにオリンピア祭への出場権を譲った。

ヒョウガは、名誉よりも、人々の称賛よりも、そして、戦のない平和な世界よりも、強い気持ちで欲するものがあり、既にそれを自分の手にしていた。
それが自分の側にいてくれるのであれば、それ以上の何かを求める気持ちは、彼の中には湧いてこなかったのである。


オリンピア祭でのニキアスの演説が功を奏したのか、翌年、アテネはスパルタと50年間の和平条約を結ぶ。
実際にはそれは、わずか6年で破られることになったのだが、その休戦期間は、27年に渡るペロポネソス戦争の間に生まれた束の間の平和ではあった。


ペロポネソス戦争は、結局はアテネ・スパルタ等、ギリシャの諸ポリスを衰退させただけだった。
1世紀の後、ギリシャ諸ポリスは、彼等がそれまで野蛮人バルバロイと呼び蔑んでいたマケドニアの力に屈することになる。






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