何が現実で、誰の死が本当で、誰の死が幻なのか──僕にはわからなかった。
まるで僕自身が悪夢の世界の住人になり果ててしまったみたいに。

僕はおそらく──僕はもう、健康で健全な心を取り戻すことが不可能なほどに深いところまで狂ってしまったんだ。

兄さんや星矢や紫龍や沙織さん、そして氷河──彼等のいる場所が僕の帰る場所なのに、もしかしたら僕は、その大切な場所を僕の赤い手で消し去ってしまったのかもしれない──と、僕は思った。
それは、ただの想像だろうか?
何もなくて、突然に、そんな想像が生まれてくるものだろうか。

いずれにしても、今のままでいたら、僕は必ず氷河を殺してしまう。
氷河を他の誰にも渡さないために。
今の僕は、そんな恐ろしいことをさえしかねない狂人だった。


だから。
だから僕は、そんなことをしてしまう前に、僕自身を消し去ることにしたんだ。






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