氷河が離れても、身体の奥に残る疼きが、氷河を受け入れるために開いていた身体を動かすことを、瞬にさせてくれなかった。
その時になって、自分があられもない体勢でいることに気付き、瞬はどうにかして せめて見苦しくないように身体の向きを変えようとしたのだが、瞬は自力でそうすることができなかったのである。
身体の中に、まだ氷河がいるような気がする。
自分の意思で動かせない身体に、瞬はもどかしさを覚えた。

氷河が、そんな瞬の様子に気付き、瞬の脚を閉じるようにして抱きかかえ、瞬を寝具の上に横たえてくれた。
「大丈夫か? 乱暴にしすぎたか? すまない」
気遣わしげにそう言ってくる氷河に、瞬はかろうじて首を横に振ることができた。
そして、そうすることができた自分自身にほっとする。
もう、些細なことで氷河と擦れ違うような状況に陥るのはいやだった。

氷河が安堵したように微笑む。
「もう俺のものだ。俺が守ってやる。何があっても離さないからな。たとえ帝や上皇でも、おまえが俺以外の誰かと寝るのは許さない」

氷河の我儘なその言葉が嬉しくて、瞬は――瞬もまた微笑した。
そして、深い淵に引き込まれるように、瞬は眠りに落ちていった。






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