「瞬〜〜っっ !! 」
自分の声で、氷河は目覚め、ベッドの上に撥ね起きた。
それが夢だとわかった途端に、ひどく情けない気分になる。
もう少し いい夢の見ようもあるだろうに、よりにもよって瞬に頭からソースをぶちまけられる夢とは。
使い慣れていないベッドでの就寝がよくなかったのかと、そんなことを考えてから、氷河は、それが瞬の部屋にあるものと同じメーカーの同サイズのベッドだということを、初めて知ったのだった。

こんな事態になっても瞬は平気なのだろうと思えてしまうことが、氷河の情けなさに拍車をかけていた。
改めて考えてみるまでもなく、何もかもが一輝の言う通り――なのである。

さすがに本当に泣きついたことはなかったが、毎晩瞬の部屋に押しかけ、瞬の機嫌と体調を伺い、問題がないようだったら ないなりに、あるようだったら その問題を取り除き――いつもいつも瞬に働きかけるのは自分の方で、瞬はそれを待っているだけ。
今となっては、瞬がそれを待っていてくれたのかどうかすら疑わしく思えてくる。
なにしろ、“2人のこと”に、瞬が積極的に出てきてくれたことは これまでただの一度もなかった。
それが、2人の現実だった。

――現実の方が悪夢より悪い。
見慣れぬ深夜の自室を見まわして、氷河は長い吐息を洩らした。






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