2日後、龍座の聖闘士の次に脱落したのは天馬座の聖闘士だった。
脱落の理由は明白。
「すっかり忘れてたんだけど、俺、週に1度はオリーブオイルとトマトソースたっぷりのパスタを食わなきゃ死ぬようにできてんだよ。あと、この季節には肉まんと鍋焼きうどん〜!」
――というものである。

「幼児用はイチゴ味やバナナ味の開発で対応できるけど、それでごまかせない年齢に達している者向けには、もっと凝った味付けが必要ということね。和洋中の3コースくらいは用意しなくては」
真面目なのか冗談なのかの判断のしづらい沙織の言葉を、星矢は聞いてもいなかった。
ピザまんを口いっぱいに頬張りながら、星矢は、本日の検査のために検査室に入っている3人――星矢自身の脱落によって3人になった3人――のことだけを気にしていたのだ。

「うっわー。残ったの、あの3人だぜ。あの3人。すっげー!」
脱落した2人は、被験者たちの住居である東側の建物から、厨房と調理師がいる西の建物への移動を既に済ませていた。
そこは食糧貯蔵庫と冷蔵庫と電子レンジがある、素晴らしい場所だった。
「まあ、最初に脱落するのは氷河だろう。瞬と一輝は修行地の自然環境が変化に富んでいたから、環境変化への心身の順応性もあるだろうし」
カニシューマイをつまむことで噛める喜びに浸りつつ、紫龍が言う。

ベシャメルソースたっぷりのムサカとピラフを交互に頬張りながら、紫龍の予想に星矢は頷いた。
「そしたら、次に脱落するのは一輝だよな。氷河が消えれば、瞬と氷河を見張ってる必要もなくなるんだし、奴はケーキへの執着もないから、あっさり瞬に勝ちを譲るだろう」
「まあ、それが妥当な結末だろうな」

最初からわかっていたことではあったが、それが星矢と紫龍の一致した見解にして予測だった。
このサバイバル実験の勝者は瞬――というのが。






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