“色っぽく”なった瞬からは、小宇宙が完全に消え去ってしまっていた。
チェーンを振りまわすだけの腕力も失われていた。
瞬は、訳がわからなかったのである。
沙織の意図も、それどころか、そもそも色気とはどういうものであるのかという根本的なことすらも。

女神アテナの力によって 瞬は、なんと5、6歳の子供の姿に変えられてしまったのである。
この幼い子供の姿のどこに色気があるというのか――瞬は混乱し、瞬のその混乱は瞬だけのものでは終わらなかった。
変わり果てた瞬の姿を目の当たりにした瞬の仲間たち(含む氷河)は、真剣に、心底から、唖然とし、呆然とすることになったのである。

瞬は、一見したところ、身長が縮み、体型が子供のそれになったということを除けば、他に大きく変化したところはなかった。
逆行した10年の間に培われた小宇宙の力と筋力は失われていたが、瞬の表情はもともと16歳でも6歳でも大して変わりのないものだったし、当然、表情から受ける印象もさほど変わっていない。
にも関わらず、体型の違いというものが人間に及ぼす影響は甚大である。
すっかり非力な子供になった瞬は、それだけで、心までもが気弱で頼りない生き物になってしまった――らしい。
瞬自身の意識がそう・・なのだから、そんな瞬を見る仲間たちが瞬に対して抱く印象も、自然の成り行きとして それに連動し、変化する。

体型の変化に伴い、瞬は身に着けていた服も子供用のそれに変わっていた。
それが沙織の趣味なのか、幼い子供になってしまった瞬の出で立ちは、白いブラウス、濃紺の短いパンツ、脚はナマ脚、純白のクルーソックス。
どこから何をどう見ても、これから小学校の入学式に臨むぴかぴかの一年生――といった風情である。
普通の小学一年生と違うのは、パンツの丈がぎりぎりまで短いことと、それが身体のラインを露わにするほど肌にぴったりしたものであることだけだった。






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