さて、私は、285500カウントキリリク話を書き終えた後も、しつこく色気について考え続けておりました。 で、その結果、ある一つの考えに至ることができましたので、ここではそれを述べさせていたたきます。 私が辿り着いた考え。一応の結論。 それは、『今回のリクエストで、私が色っぽさに悩むことになったのは、問題として採り上げられたものが“瞬ちゃんの色気”だったからなのだ』というものです。 私が考えなければならなかった問題が、『男性の色気について』『女性の色気について』であったなら、私はあんなに悩むことはなく、それが正しいにせよ誤っているにせよ、自分なりの一つの考えをもって話を書くことができていたでしょう。 『瞬ちゃんの色気』だから、私は迷い、悩み、そして、確たる結論に至ることができなかったのです。 人間には、『男性』『女性』『瞬ちゃん』の3つの性があります。チューリップ畑ではそういうことになっています。 その中で、男性の色気、女性の色気は、生殖に関連付けて説明できるのではないかと思いました。 私は、今回のキリリク話で、いわゆる『弱さ』や『隙』が色気を培うと書きましたが、もし これが男性だったらどうでしょう。 端的な例をあげますと、たとえば、軍服を身に着けた男性。あるいは、きっちりスーツを着込んだ、いかにも野心家で切れそうで危険な雰囲気の男性。 彼は敵やライバルに(あるいは味方にも)隙を見せません。弱みも見せません。 でも、軍服やスーツを着用している男性には、相当数の女性が ある種の色気を感じるのではないかと思います。でなければ、『戦う男の制服図鑑』や『働く男の制服図鑑』等の書籍が売れるはずがない(すみません。私は買っていません;)。 軍人や野心を持った人間には『強い』『攻撃的』『精力的』等のイメージがあります。 要するに、女性は(おそらく)セックスの強そうな男性に色気(まさにセックスアピール)を感じるのです。 生殖行動において、『男性』は能動的行動を求められる性だから。 対して、女性の場合。 女性の場合は、隙のある方が断然色っぽいと感じられるだろうと思います。自立心に満ち、弱みを持つ様子を見せず、心身共に強そうな女性にはあまり色気が感じられません。 つまり、男性からの生殖行動への誘いに乗ってくれそうな女性の方が色っぽい(と男性は感じる)。 これは、その方が男性にとって生殖行為を成立させるのに都合がいいからなのではないでしょうか。 人間はさほどではありませんが、動物(特に哺乳類)においては、メスが生殖行動にOKを出してくれるかくれないかということは、オスにとって非常に大きな問題です。彼等は、メスが生殖行動に協力的でないと、生殖行為が成立しない。 わんこやにゃんこのオスは、メスが前足でしっかり踏ん張っていてくれないと生殖行為が実行できないのです。 要するに、セックスの誘いに乗ってくれる方が、オスにはありがたい=色っぽいということになる。 そして、女性(もしくはメス)の立場に立てば、男性(もしくはオス)は、肉体的に強靭で、生活力がある方が生殖行為・子育てに都合がいい。 動物としての人間にこういった意識があるために、大多数の女性は、強そうな男に色気を感じ、大多数の男性は、男性の支えを必要としているような女性に色気を感じる――ことになるのではないでしょうか。 もちろん、これには例外もあります。 自立して生活力のある女性は、むしろ自分の言いなりになりそうな男性を好むかもしれない。 支配欲過多の男性は、むしろ隙のない強そうな女性を組み敷くことに快感を覚えるかもしれない。 強い男性を好むはずの女性も、あんまり相手がマッチョ過ぎると、自分の身に危険を感じて、色気を感じるどころではないかもしれません。 つまり、自分といいセックスができそうな相手を色っぽいと感じるのが 人間なのではないかと思うのです。 ですから、人間の性的嗜好や立場によって、その人が色っぽいと感じる人間の範囲も、少しずつ違ってくる。 人間の数だけ、色気もあるということです。 翻って、瞬ちゃん。 身もフタもない言い方をすれば、『やおいの受け』。 瞬ちゃんは氷河にとって性交の相手ではあっても、生殖の相手ではありません。 にも関わらず、氷河は、一般的な男性が女性に求める役割を瞬ちゃんに求めている。 当然、瞬ちゃんの色気は男性の色気であってはならず、しかしながら、瞬ちゃんは女性ではない。 だから、瞬ちゃんの色気は、『男の色気』『女の色気』で語ることはできないのです。それは『瞬ちゃんの色気』でなければならない。必然的にそうなる。 そしてですね。 チューリップ畑に限って言えば、氷河と瞬は互いに互いの唯一の性交の相手なので、氷河がどんなでも、瞬がどんなでも、氷河にとって瞬は色っぽく、瞬にとって氷河はセクシーなのです。 かつ、チューリップ畑では氷河と瞬の性行為は基本的に気持ちいいものと決まっているので、相手がどうであれば自分のセックスに都合がいいか(あるいは悪いか)ということを気にかける必要もない。 ――と、ここまで考えて、「なーんだ、私、あんなに悩む必要なんてなかったんだ」と思った次第。 氷河にとって瞬ちゃんは色っぽく、瞬ちゃんにとって氷河は色っぽい。チューリップ畑の二人はそう感じるのです。 そんな二人を見ている第三者の目など、第三者が彼等を色っぽいと感じるか否かなど、恋し合う二人にどれほどの意味があるでしょう。 私は最初から、瞬ちゃんを色っぽくするにはどうしたらよいのかなどということを悩む必要はなかったのです。 というのが、私が辿り着いた一応の結論です。 悩まなくていいことを悩んでしまったおかげで、私は、作品の出来はともかく楽しい考察時間を持つことができました。 ほんと、楽しかったです。 そんなこんなで、色っぽい瞬ちゃん話をリクエストしてくださったポッポさんに心からの感謝を捧げつつ、私の色気の考察を終えたいと思います。 どうもありがとうございました! |