だが――やがて俺は気付いたんだ。 俺が最初に瞬を犯した時と、二度目に瞬が俺を求めてきた時。 俺の胸の下で、物言わぬ人形のようだった瞬が、突然血肉の通った人間に豹変した訳――に。 俺は、最初のうちは、それをさほど奇異なこととは思っていなかった。 初めての時は――矛盾した話だが、俺は自身の臆病のせいで瞬にひどく乱暴にした。 瞬が俺の無体に驚き、身をすくめることしかできなかったとしても、それはさほど不思議なことじゃない。 そして、二度目に瞬が俺を求めてきたのは――瞬が子供の頃どれほど寂しがりやだったのかを思い起こせば、これもさほど唐突な変化には思えなかった。 寂しがりやの瞬は、心細さに囚われた夜に一人で眠るくらいなら、俺に無体なことを強いられても一人きりでない方がいいと感じているんだろうと、俺は思った。 その身体の中に あからさまなで浅ましい欲望を捻じ込まれても、そのあとで俺の体温を感じながら、自分は一人ぽっちではないと安心して眠れることの方が、瞬には何より大事なことなのだろうと。 瞬は、子供の頃と変わらず寂しがりやで、一人きりになることを何より恐れている。 聖闘士になり、死と戦いが身近なものになったことで、瞬の不安は 子供の頃より更に大きく更に具体的なものになってしまったんだろう。 俺と寝ることで、瞬はその不安を忘れることができる。 子供の頃と同じように、瞬の目的はその不安を忘れることだから、瞬の涙はあの頃と変わらずに綺麗なままなんだ。 たまたま瞬の身体がセックスに向いたようにできているのは、俺にとっても瞬にとっても幸運なことだった。 そういうふうに 瞬の身体のしなやかさは、おそらく聖闘士になるための修行の副産物だった。 いずれにしても、瞬が欲しいものは自分が一人ぽっちではないという安心と実感なんだ。 俺はそれを瞬に与えてやれる。 与えてやれるどころか、それこそが俺の望みだ。 瞬は、俺を愛しているとか恋しているとか、そんな気持ちに急きたてられて俺を求めてくるのではないだろう。 だが、瞬は俺を必要としている。 必要としていることと、愛しているということの間に、いったいどれほどの差異があるというのか。 俺たちは同じものを求めている。 そんな二人が一緒にいることにどんな問題があるというんだ。 俺は、最初のうちはそう思っていた。 ――瞬が俺に求めているのは、安らぎや安心感なんかじゃなく、俺にその身体を傷付けてもらうことなのだとわかったのは、かなり時間が経ってからだった。 |