「瞬がまた シベリアに行った !? それは いったいどういうことだ!」
氷河が瞬に何も言わなかったのは、なぜ白鳥座の聖闘士が これまで瞬に『ひたすら甘く』していられたのかを、瞬自身に気付き考えてほしいと思っていたからだった。
瞬には それができるし、それは瞬自身にしかできないことだと思うから。
瞬は瞬自身の力だけで それをしなければならないし、もしそれができなかったなら――瞬が以前の瞬に戻らなかったなら――二人は相応の結末を迎えることになるだろう。
それも致し方なしと、決死の覚悟を決めて瞬に厳しく当たった氷河は、瞬が またしてもシベリアに頼ろうとしたことに――あるいはシベリアに逃げたことに――尋常でない衝撃を受けたのである。

「俺に言うなよ! 元はといえば、おまえが瞬をシベリアに連れていったのが始まりだろ! 瞬は、あれからおかしくなっちまったんだ!」
氷河の怒声に負けず劣らず大きな声で、星矢が氷河を怒鳴りつけてくる。
瞬がおかしく・・・・なったことには、星矢も気付いていたらしい。
おそらく瞬の優しい気質は 以前のままだったから――瞬がおかしくなっていることに気付いていても、対処の仕方がわからず、星矢は、おかしくなっていく瞬を手をこまねいて見ているしかなかったのだろう。

「いったいシベリアに何があるというんだ……」
瞬が求めているものが何なのかはわからなかったが、星矢の言う通り、瞬が変わり始めたのは、白鳥座の聖闘士が瞬を その修行地に連れていってからのこと。
瞬を変えることになった何かがそこにあるはずと考えて、瞬の仲間たちは瞬のあとを追うことにしたのだった。






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