『お風呂で氷瞬』 「子供の頃のエピソードでも、温泉に行く話でも、あるいは色っぽい話でも、何でも結構です」 ──とのことでした。 杏里さん、リクエスト、どうもありがとうございました! はい。そういうわけで、今回のお題は お風呂です。 だったのですが。 この実に日常的な お題が、非常に非常に難しかった! これまでいただいた お題の中で、ベスト5に入るくらいの難題でした、お風呂。 そもそも、お風呂で起承転結を考えるのが困難で。 たとえばですね。 起 ―― 服を脱いで 承 ―― 身体を洗って 転 ―― シャンプーして 結 ―― 湯船につかって、『極楽〜』 こんなふうなのって、よほどの文章力を有する人でなければ、一つの読み物にできませんよ。 プルーストくらいの細かな描写力がないと、それなりの長さにもできない。 まさか氷瞬やおいサイトで『入浴が いかに健康に寄与するか』などというテーマで話を書くわけにはいきませんし、他に それなりのテーマを持たせることも(私の能力では)至難のわざ。 ですので、私は、入浴シーンで話を書くことは 早々に諦めました。 入浴シーンで話を書くことを諦めた私が、次に考えたのは、お風呂をモチーフにした先人たちの作品を参考にさせていただくこと。 最初に思い出したのは、『テルマエ・ロマエ』。 こちらの作品は、実は私はマンガも映画も見たことがなくて、深夜に放映されたアニメを数話 観たことがあるきりなのですが、アニメの出来はさておき(絵がほとんど動いていなかったので)、あの発想力はすごいと思いました。 お風呂で、あそこまでストーリーを膨らませることができるなんて、並の人間にできることではありません。 よほど お風呂を愛している方でないと思いつきませんよ、あれは。 本当に本当に素晴らしい。 素晴らしすぎて、私ごときには 二番煎じをする手段すら思いつきませんでした。 (ちなみに、今回の作品のタイトル『 In Aqua Veritas Est - 真理は水の中にある - 』は、ローマのカラカラ大浴場の遺跡の壁画に書かれている『 In Aqua Sana Est - 健康は水の中にある - 』のもじりです) というわけで、氷瞬版『テルマエ・ロマエ』を諦めた私が次に考えたのは、「温泉といえば2時間ドラマでしょう!」ということ。 温泉絡みの2時間ドラマで、『主演:瞬ちゃん、演出:氷河』のミステリー小説を書いてみようと思ったわけです。 で、私は 早速、2時間ドラマにおける温泉の扱いについての調査を開始。 これがまた、実にすごかった! 『能登半島輪島を巡る究極のズワイガニと伝統の技、輪島塗の美に隠された連続殺人の謎!』 『下関産ふぐと日本海のイカ秋吉台と萩焼き、長門湯本温泉郷をめぐる連続殺人事件の謎』 『旬を喰らう真夏の伊勢志摩、アワビの踊り食い、海女さん料理、夏野菜そして真珠をめぐる謎の連続殺人事件』 『絶景雪景色! 秘境の一軒宿と合掌造り、氷見の寒ブリ食べ尽くし! 連続殺人に巻き込まれた師弟愛の悲劇』 『豪雪青森・浅虫温泉! 美人料理長が振舞う極上海の幸! 老舗旅館に生まれた兄弟の壮絶人生と連続殺人の悲劇』 『世界遺産の露天風呂に謎の美女? 熊野古道と那智の滝、パワースポットに渦巻く女の情念! 連続殺人! 死体は二度殺された !? 』 『仙台・秋保温泉に蘇る怨讐の殺意! エリート医師の野望と拘束された宿泊者たち! 真のおもてなしが真実を暴く』 タイトルを見ただけで、私などには到底 太刀打ちできる分野ではないと思いました。 そして、次に考えたのは、お風呂といえば 由美かおるさん。 「氷瞬版水戸黄門はどうだろう?」ということでした。 黄門様ご一行を、アテナ様ご一行にして、 黄門様 : アテナ 助さん格さん : 氷河と紫龍 うっかり八兵衛 : 星矢ちゃん 風車の弥七 : 一輝兄さん かげろう お銀 : 瞬ちゃん 悪代官 : ハーデス様 ――で ストーリーを作って、瞬ちゃんの入浴シーンを入れる。 「これなら、私にも書ける!」と意気込んだのも束の間、このパターンにも問題が。 実は、私は、由美かおるさんの入浴シーンがある『水戸黄門』を観たことがないのです。 ドラマの水戸黄門自体、子供の頃に 東野英治郎版を何作か見たことがあるだけ。 なので、ある時期から『水戸黄門』のドラマに毎回 由美かおるさんの入浴シーンが挿入されていたということは知っていても、なぜ入浴シーンが挿入されるようになったのかを知らない。 その流れを知らないのでは、話になりません。 かくして、このパターンも断念。 その後もあれこれ考えて、七転八倒して、結局 こういう話になりました。 まさか お風呂で これほど悩むことになろうとは。 お風呂――日本人が こよなく愛するお風呂。 本当に侮れない施設だと思いました。 & 杏里さん、侮れないお題を どうもありがとうございました! |