少し冷静さを取り戻したらしい瞬が、ダイニングテーブルに近寄る。

そうして、瞬は、顔面蒼白で納豆ハンバーグを食べている氷河の腕に、手の平を重ね、言った。

「嫌いなのなら無理して食べないで」


そんな瞬を見やり、氷河が抑揚のない声音で告げる。
「おまえが俺を試すはずがない」

「……」

瞬は、氷河の青い瞳を見詰めた。
そして、氷河に誤解されていないことを知って微笑を取り戻し、肩から力を抜く。

「いやだ、僕。氷河がそんなひどい誤解するはずないってわかってなきゃならなかったのに……。ごめんね、氷河。勝手に一人で喚き散らしたりして」

氷河は、瞬のその言葉を確認してから、やっと手にしていた箸を箸置きに戻した。

「そうだ。俺はおまえを知っている」

「僕、氷河を試そうなんて考えてなかったの。ほんとに氷河に元気になってほしかっただけなんだよ」

「いいのか、そんなことになっても」

氷河に尋ねられた瞬が、ぽっ☆と頬を上気させる。
“正直な”瞬は、それには縦にも横にも首を振らなかった。

“瞬を知っている”氷河は、当然、瞬の真意を正しく理解していたろうが。






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