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「ほんとにもう、どうしてこんな無茶するの!」

マキロンとオロナイン軟膏と絆創膏と湿布薬で全身の表面積の3分の1を覆われた氷河の右頬に、最後の絆創膏をばってんに貼って、瞬は氷河をベッドに押し倒した。

押し倒された氷河が、瞬の怒りに少しばかり気後れしたように、小さな声で呟く。
「……おまえが……俺を頼ってくれてると言ったから……」
「氷河……」

微妙に――微妙に、『頼る』の意味が違うような気はしたのである。
瞬の『頼る』は、氷河が側にいてくれれば瞬自身が強くなれる――というような意味合いの『頼る』だった。

そう言おうとして、だが、瞬はそうするのをやめたのである。

氷河の無茶な行動が、嬉しくなかったわけではない。
いつ渡そうと大した不都合のないクマのためにこんな無茶をしてくれた氷河。
実際、彼のためになら自分も強くなれるだろうと、今の瞬には思えていたのだ。

「……ありがとう、氷河」
氷河の右頬のばってんに手を添えて、素直に、氷河に礼を言う。

瞬の言葉に、氷河の青い瞳は嬉しそうに輝いた。








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