「おはよう、氷河」

衝撃冷めやらぬ氷河に、氷河より少し遅れて目覚めた瞬が、ベッドの上から朝の挨拶を投げかけてくる。

いつもなら、瞬の目覚めを知るや、すぐにパソコンの前から瞬の許へと取って返す氷河も、今日に限っては硬い表情で頷くのが精一杯だった。

そんな氷河を訝って、瞬が首をかしげる。
「何かあったの? 顔色悪いけど」

「……きょ…今日は……」

瞬も、氷河の日課は知っている。
もっとも瞬は、氷河がそれを気にしているのは、今日が何の日なのかを知ることで、平和な日々のあることに感謝するためなのだろう――くらいに考えていたのだが。

「聞かなくてもそれくらい知ってるよ。勤労感謝の日でしょ。働いている人って偉いよね。そういう人たちがいてくれないと国も社会も成り立たないわけだから。僕もほんとは働いてみたいんだけど……」

まだ10代で、しかも不定期に聖闘士としてのお呼びがかかる現状では、定職に就くのはまず無理な話である。

残念そうにそう告げる瞬の前で、氷河の顔はひたすら強張るばかりだった。








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