バラたちの高貴で美しいご主人様が、バラたちの前に姿を見せなくなってから、長い時間が経ちました。
最近、バラ園の世話は、数人の黄金聖闘士たちが持ちまわりで担当しています。
今日はどうやら、バラたちの天敵、獅子座の黄金聖闘士・アイオリアの担当の日のようでした。
「大変だーっっ! アイオリアが来たぞーっっ!」
「アイオリアだっ、防御態勢に入れーっっ!」
見張りのバラからの非常事態宣言を聞いた1号が、さっと全身に緊張感をみなぎらせます。
「33号、俺の陰に隠れてろ!」
「そんな……! そんなことしたら、1号がアイオリアの攻撃をまともに受けちゃう……!」
「おまえが無事でいてくれたら、俺はそれでいいぜ!」
「1号……。ううん、でも、やっぱり、そんなこと――」
──といちゃついている1号と33号の邪魔をしないようにしよう──などというデリカシーを、獅子座の黄金聖闘士は持ち合わせていません。
両手と両肩、頭の上に、水をたたえたバケツを載せてバラ園にやってきたアイオリアは、
「ええい、面倒―っっ !! 」
の掛け声一声、
ざっぱーん !!!!
と、バケツの水をバラたちの上にぶちまけました。
当然、33号を庇って、アイオリアの前に立ちはだかった1号が、アイオリアのガサツなバケツ攻撃のいちばんの被害者です。
「ふぇーっくしょいっっ★」
「1号、大丈夫っ !? 」
「ああ、もちろんだぜ! 俺は鍛えてあるからな」
「良かった……。1号に何かあったら、僕……」
「さ……33号……」
可憐な33号に、優しく気遣いわれた1号は照れまくりの大照れです。
バケツが降ろうが槍が降ろうが、1号と33号は、今日も幸せいっぱいでした。
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