翌日──の夜。

「夕べのあれは何だったの」
瞬は、思い切って、氷河に情報開示を求めてみたのである。
なぜ自分の身体がそんなふうに変わってしまうのか、それはおかしいことなのか、尋常のことなのか、を。
患者には、医師に医療情報の開示を求める権利があるはずだった。

「あれから、よく眠れたか」
瞬の主治医は、だが、患者の質問に答えてはくれなかった。
逆に瞬に尋ねてくる。

瞬は、首を横に振った。
「なんだか、ずっと寝つけなくて……身体がほてって、ちょっと熱もあって、それから……」
「それから?」
「…………」

氷河に触れられたところがいつもと違っていた──と、正直に氷河に告げることは、瞬にはなぜかできなかった。
根拠はない。根拠はないのだが、それは他人に言ってはいけないことのような気がして、瞬は黙って顔を伏せた。

「……。まあ、いい。続きをしよう」
「あ……うん」
氷河がそれ以上追求してこないことに、瞬はほっと安堵の息を漏らした。

氷河に訊きたいことは他にもたくさんあった。
だが、瞬は、そんなことよりも、氷河に昨夜のようなことを、もう一度少しでも早くしてほしかったのである。
今の瞬の中では、自分の身体がおかしいのかもしれないという不安よりも、昨夜の、痛みを伴った熱っぽさ──あの不思議な感覚をもう一度味わいたいという思いの方がはるかに強く、しかも、急迫していた。





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