ためらいと期待の両方に急かされて、瞬は、ソファに腰掛けている氷河の側に歩み寄った。 氷河がいつまでもソファから立ち上がらないので、彼の向かい側にある椅子に座ろうとする。 途端に、まるで咎めるな氷河の声が降ってきた。 「そんなに離れていたら、何もできないじゃないか」 「え、でも」 「ここに来い」 氷河が瞬に腕を差し伸べる。 彼が瞬にどうしろと指示しているのかは明白だったのだが、その言葉に従うことは、瞬にはためらわれた。 「そ……そんな、子供じゃあるまいし」 「子供じゃなくなるために、ここに来たんだろう? おまえはまだ子供だぞ」 躊躇している瞬の腕を、氷河が掴みあげる。 そのまま引っぱられるようにして、瞬は氷河の膝の上に座らされてしまった。 背中に、氷河の胸の熱さを感じて、瞬は顔を伏せた。 だが、まるで父親の膝に座らされている幼児のようだという瞬の羞恥心は、すぐに瞬の中から消え去ってしまったのである。 氷河の手が、昨夜と同じように、昨夜と同じ場所に伸びてくる。 そして、昨夜と同じ変化、昨夜と同じ痛み、昨夜と同じ熱が、瞬の上に訪れた。 昨夜よりずっと、それは心地良かった。 瞬は目を閉じ、氷河の指の動きに意識と五感を集中させた。 唇から熱い吐息が漏れる。 最初の当惑が消えると、熱を伴うその痛みを氷河に与えられる時を待ち遠しく思っていた自分自身を、瞬は自覚した。 瞬は、氷河の指に与えられる刺激に酔いかけていた──ほとんど酔っていた。 瞬のその酔いを一瞬にして消し去ったのは、瞬を上に乗せたままで、瞬の膝の間に割って入ってきた氷河の右の脚だった。 「あ……っ!」 酔いから覚めた瞬は、小さな悲鳴をあげた。 「どうした」 尋ねる氷河の手が、氷河の右の脚が刺激している場所に伸びてくる。 「あ……あ……っ」 氷河の手は、着衣の上から、ただ掠めるように瞬のそこを撫でているだけだった。 それだけのことに、息を止めずにいられないほどの緊張を覚える。 やがて、そうしていることにも限界が来て、瞬の喉からは、途切れ途切れに、微かな喘ぎ声が漏れ始めた。 「どこか痛いのか?」 瞬は、泣きたい気分で、幾度も大きく そうすることをやめてほしくはない、のだ。 だが、やめてもらわないと、息の仕方も忘れてしまいそうだった。 「あ……ん……あっ……あ……」 喘ぐことで、瞬はかろうじて呼吸を続けることができていた。 (こんなことで……僕、どうして……僕、どこがおかしくてこんなふうになるの……!) 自分がおかしいのだということはわかった。 それだけはわかる。 瞬の瞳に涙が滲み、瞬の漏らす声が泣き声じみてきた時、氷河は瞬を解放した。 |