途端に、瞬の意識は明確になった――ような気がした。

誰かが、『瞬』と、自分の名を呼んでいる。


自分の手のありかもわかった。
身体の変化も、自分が誰かに抱きしめられていることも、自分の身体が何を欲して疼いているのかもわかった。


瞬が次にしたことは、やっと見付けた自分の腕を、自分を組み敷いている男の広い背にまわし、やっと自分の意思で動かせるようになった自分の身体を――腰を――彼に押し付けることだった。

息が荒くなる。




「そんなに急かさなくても、すぐに望み通りにしてやる」

「俺も、おまえが欲しくてもう我慢できないから」

「ずっと、こうしたかったんだ。瞬」

「さあ、もう、おまえは俺のものだ――」



待ち焦がれていた言葉を手に入れて、半ばうっとりしかけていた瞬の身体と意識が、ふいに、電流が伝うような衝撃で引き裂かれる。

「あああああ……っ !! 」

喉の奥から搾り出されるような悲鳴は、糸が途切れるように、どこかに消えていった。


幾度も突き上げられているうちに、悲鳴は嗚咽に似た喘ぎに変わっていた。
刃物で切り刻まれるような痛みが、痺れるような快感に変わり、突き刺されるたびに、意識が空白になる。

「もっと……」

それ以上、何かを与えられることには耐えられそうにないというのに、そんな懇願が瞬の唇から漏れ始める。


あまりの痛みと歓喜に身体の感覚が麻痺し、やがて、全ての感覚を失ってしまっても、瞬は掠れた声で訴えていた。


「氷河、もっと、僕を、氷河のものにして――」





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