その光景を見た時に、氷河は、瞬の様子がおかしいことに気付いていながら、一週間もの間、悠長に構えていた自分の迂闊さを悔やんだ。 それは、油断――だった。 もしアフロディーテが、自分と同じように、瞬から生きる糧を得ようとしているのなら、自分がそうだったように、瞬に優しくなり、瞬を大切にするようになるものと――氷河は、勝手に思い込んでいたのだ。 そして、自分がそうだったように、瞬の好意が誰にでも向けられるものだということを知り、思いを伝えられずに歯ぎしりする日々を過ごすことになるだけだろう――と。 だが、同じものを求めている人間が全て、同じ行動に出るとは限らない。 双魚宮の奥の間の床に、まともな意識もないような目をして、座り込んでいる瞬の姿を見付けた時に、氷河は、そんな考えるまでもないことに考え及んでいなかった自分の愚かさを自覚した。 ――瞬は、その身に衣服をまとっていなかった。 |