「この子はもう、すっかり、私の言いなりだ」

自失している瞬のあられもない姿を眺め、アフロディーテは愉快そうに氷河に笑ってみせた。


「ああ、君に恨みはないから教えておいてやろう。この子がこんなふうになってしまったのは、薬のせいだよ。幻覚作用のある薬をアンドロメダに含ませたんだ。最初のキスの時に」

この男は何がそんなに楽しいのだろう――アフロディーテの含み笑いが、氷河の神経を逆撫でした。

「薬が効いてきたら、私に『瞬』と呼ばれただけで、私を君だと思ってしまったらしい」
「…………」

「他愛のない……。人の肌に触れた経験もない子供が私を救おうなどと」
「貴様……」
「そんなに恐い顔をするものじゃない。君にも嬉しい話だろう。実に可愛いものだったよ。君の名を繰り返し呼んで、私にしがみついてくるアンドロメダを見ているのは、実に気分がよかった。どんな屈辱的なことも、君の振りをして『瞬』と囁いてやるだけで、この子は諾々と従うんだ」

これが、瞬にあれだけ気遣われた者の言い草だろうか。

「しかも薬が切れると、肉欲に負けたのだと落ち込んで――この子が、どんなふうにしたか教えてやろうか? 君に命じられて、自分から四つん這いになったり、君のものを含んで必死に奉仕したり、命じれば自慰さえしてみせてくれた。やり方も知らなかったようだがね。教えてやったら、すぐに覚えた。仕込み甲斐のある、いい生徒だ」  

彼は、瞬の無垢を利用し、踏みにじった。

「小僧っ子のくせに、私に同情してみせたりするからだ。それがどれだけ、私のプライドを――」

己れのプライドを守るために。





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