「瞬の居所がわかりました」

日本へは戻らずに聖域に残っていたアテナとアテナの聖闘士たちの許に、アベルの意を伝える使いがやってきたのは、それから間もなく。

沙織の言葉に、アテナの聖闘士たちは色めきたった。
が、沙織の口調にあまり喜色が含まれていないことに気付き、すぐに表情を堅くする。

「瞬は無事なのか」
口火を切ったのは、珍しく氷河だった。

「元気なようです」
「なら何故」

「……アベルが言うには──」
アテナの聖闘士たちが予想していた通りの名が、沙織の口から出てくる。

「やはりあいつか!」

アテナの命をその手に握り、圧倒的に優位にいた太陽神が、なぜか突然、その野心の達成を思いとどまった。
それで地上に平和と安寧が戻ってきたからと言って、不自然極まりないその成り行きを素直に認め受け入れることは、聖域側に立つ者たちには不可能だった。


平和を取り戻した聖域と世界に、しかも、瞬が戻ってこない。
氷河たちには、自分たちの知らないところで回る不安な歯車の音が、確かに聞こえていた。








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