「き……貴様は馬鹿だ。瞬を殺すだと? 瞬の命を奪い、俺たち人間を根絶やしにした世界で、貴様は貴様だけで生き続けるというのか? 貴様ひとりきりで?」 氷河は、瞬が決して自分のものにならないだろうことを自覚したアベルが、自暴自棄になっているのだと思った。 そうでなければ、彼の馬鹿げた言葉の意味が理解できなかった。 「それが嫌だから、貴様は、神の国を──自分の仲間だけでできている国を作ろうとしたんじゃないのか? 自分を受け入れ、崇拝してくれる者たちだけの国を──」 現代の人間の社会では、それは望み得ないことではある。 蘇った神を受け入れてくれる者は、現代という時代には一人としていなかった。 神である、彼の妹でさえ──。 ひとりとして同胞のいない世界。 そこに生きていかなければならない者の孤独は、氷河にもわからないでもない。 だから、瞬を求める彼の気持ちも、認められないだけで理解はできるのだ。 「邪悪な人間共がひしめき合う世界など消え去った方がよいのだ」 「今の貴様は人間より邪悪だ!」 だが、認めることは、決してできなかった。 |