「瞬、早く、そいつから離れろ!」 アテナの聖闘士たちの攻撃を受けて、玉座の前に膝をついた神の側から、瞬はまだ離れずにいた。 「氷河……」 このまま、この寂しい人を、その寂しい心と共に封印する。 そんな哀しいことをしてしまっていいのだろうか──? 瞬は、どうしてもアベルの側を離れることができなかった。 「行きなさい。彼のところに」 氷河の言葉に従うことをためらっている瞬に、囁くようなアベルの言葉が届けられる。 「だ……駄目……。そんなこと、できない」 瞬が泣きそうな顔で大きく横に首を振る。 アベルは、そんな瞬を見て、力無く微笑した。 「馬鹿な子だ。あんなにひどい目に合わされたのに」 氷河が──いつまでもアベルの側を離れようとしない瞬に業を煮やした氷河が、瞬の兄を怒鳴りつける。 「一輝、瞬を頼む!」 返事をする前に、一輝は瞬を抱いて、アベルの側から飛びすさっていた。 途端に勝負は決し、太陽神の小宇宙は完全にその力を失った。 |