新月の夜。
太陽神の神殿の外では、無数の星たちが静かにきらめいている。



「わかっていたのだ。アテナが私の申し出を拒んだ時に──」

闘いの最後の風も消え去った石の神殿の床に横たわり、アベルはそう告げた。

「私が神の国を作っても、そこに住む者は誰もいない。
結局、私はひとりだ。
ひとりだということに苛立っていた。
そして、瞬に会った」

「――私は、人間に復讐しようとしていたのかもしれない。
神々から、神としての誇りを奪った人間たち。
愚かさと、神をすら惹きつける何かを持った者たちに──」

「瞬は……そうだ、瞬は……まさに神を惹きつける人間そのものだった。一貫性がなく、私を憎み続けることもできず、私を哀れみながら恐れ、恐れながら甘え──」

「瞬と暮らしたかったのだ、私の国で」

孤独な神の声は、

「この私が、力でも人間に負けるのか……」

夜の空で最も儚い光をしか持たない星のように、今にも消えていってしまいそうだった。

「神々の時代は、本当に遠いところに行ってしまったのだな」 

彼の身体は、本当に、人間のそれと同じものらしい。
一つ大きな息を吐くと、人間と同じように、胸が大きく上下した。


「封じるがいい。その十字架にでも。抵抗はせぬ」








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