「僕には、僕を必要としてくれる人が必要だった。氷河も――そうなんだと思った」
瞬の声は小さくて、だが、そこには必死の色が滲んでいた。


必要としてくれる人が必要――。
そうだ。
俺もそうだった。

「僕、一度だって嫌だったことない。同情なんかで、あんなことしない。僕には、ああすることが必要だった。僕は、氷河が僕を欲しがってくれるのが、気が狂いそうになるくらい嬉しかった」

「あんなに僕を必要としてくれる人はいなかった。僕を欲しがってくれる氷河が、僕は欲しくて欲しくて――」

「氷河に我儘言われるたび嬉しくて、氷河に無理強いされるたび嬉しくて、だから、どんなことでもした」

「いっそ、氷河と一つになってしまいたかった。でも、そうしたら僕を必要としてくれる人がいなくなっちゃうから……」

「僕がいつも泣いてたのは氷河が僕の中に入ってきて、一つになったような気がしても、結局、氷河は僕から離れていくから、それが辛かっただけだよ」



瞬が――俺が欲しくてたまらなかった言葉を、草木に請われるまま自らを与え続ける春の雨のように降り募らせる。
その100分の1だけでも、もう少し早く貰えていたなら、俺は、あんなに渇いた思いをせずに済んでいたのに。





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