「駄目だよ、氷河。こんなところで」

「いやじゃないんだろ? もう、こんなになってるし」





瞬を“こんな”にしたのは俺自身だったが、もちろん、俺がそんなハシタナイ真似をしたのは、瞬がそれを望んでいるからだ。
瞬が、俺を欲しがってる。
応えるのが男ってもんだろう。


「ひ……人が来たら……」
「始業までまだ1時間もある」
「でも……」
「誰が来たって構わないじゃないか。見せてやればいい」

「氷河……」

瞬の頬は上気して、その瞳は熱を帯びて潤んでいる。

今ではわかってる。
瞬は、そんなふうにして、必死に俺を誘っているんだということが。
恥ずかしがってみせるのも、困ったように瞼を伏せるのも、全部、俺を惹きつけるための無意識の媚びなんだ。

事実、瞬の身体は、俺を受け入れるための準備を始めて変化していた。


「あ……やぁ……ん」
甘えるような声。
生まれたての子猫だって、ここまで甘い声は出せないだろう。

それで、俺はますます猛ってくる。

「このまま、ここでやっちまうぞ。いいか」
「氷河の……好きなようにして」

子猫が、小さく頷いて、俺にしなだれかかってくる。

それは、瞬にとってどうでもいいことなのではなく――瞬は、俺が俺のしたいようにすることを望んでいるんだ。



――瞬が俺を求めてくれているんだとわかったら、俺の苛立ちも治まるかと思っていたが、それはとんでもない間違いだった。

石ころが坂を転がり落ちるように、瞬にのめりこんでいくのが、自分でもわかる。
俺が瞬を欲しがれば欲しがるほど瞬が喜ぶのなら、瞬もそれを望んでいるのなら、遠慮なくサカれるってもんだしな。





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