今なら、あの頃より少しは大人になった今なら、俺はもっと違うふうに瞬を愛せるだろうか――?

そんなことを考えている自分を、俺は自嘲した。
俺を――瞬から逃げた俺を――瞬が受け入れてくれるはずがない。


瞬は、そんな昔のことを思い出しもしないらしい。
何も言えずにいる俺を、瞬はただ穏やかに見詰めている。

瞬は、おそらく、俺よりずっと大人な奴に愛されて、愛されて――満ち足りて、そして、そいつを信じているんだろう。 

俺は、ずっと一人でもがいていたのに……!

忘れようとして忘れられず、忘れかけるたびに蘇る瞬の面差し。
いつも涙に濡れていて、いつも俺に怯え、それでも俺にすがりついてきた瞬の瞳――。

初めて恋を自覚した時には、瞬は花のような笑顔の持ち主だったのに、俺が瞬をそんなふうに変えてしまった。


まだ10代だった。
俺も瞬も若すぎた。
だが、本気だった。
のめりこむように愛さずにはいられなくて、瞬の全てを自分のものにせずには安心できなくて――。


やがて、俺は、そんなことができるわけがないと知った。
自分自身ではないから、人は人を愛するんだ――。





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