瞬は、その溜め息さえ、ちゃんと男を刺激するように甘く洩らせるようになっていた。

そんな大胆なことをするわけではなく、控えめで、だが、全てを心得ていた。
俺が何を求めているかを察して、その腕はしなやかに動く。

瞬を自分のものにするために焦ってばかりいた頃とは、まるで違うセックスだった。

自然に俺を受け入れて、俺を燃え立たせて、そして、いつまでもその温かさに溺れていたいと思わせる、その熱。


誰が、俺の瞬をこんなふうにしたんだ。
こんなふうに、俺が――俺がこんなふうにしてやりたかったのに。


吐息が甘い。
肌の感触も、唇も、髪も、手も、肩も、脚も、胸も、甘い。
なまめかしく、磨き込まれ、愛され慣れた、温かい真珠のような肌に、俺は溶けてしまいそうだった。
瞬の中に取り込まれてしまいそうだった。
じわじわと、瞬は、俺の感覚を、まるで麻薬のように麻痺させていく。

「あ……あ……」

誰かが、この瞬を毎晩抱いている。
俺でない誰かが。

「気持ちいいか」
俺が尋ねると、瞬はうっとりしたように、ゆっくりと頷いた。


昔は、噛みつくようにしか愛せなかった。
俺は、多分、瞬の心だけじゃなく、身体をも傷付けていた。


瞬を抱き寄せ、背中から抱きしめて、突き立てる。
瞬の身体がびくりと大きく震えるのが、俺の腰と胸に伝わってきた。

肌は、春の陽射しに暖められて凪いでいる湖のようだったが、瞬の中は炎のようだった。
燃えるように熱く狂ったように、瞬が俺に絡みついてくる。

昔の俺だったら、すぐに果てて、そして、間も置かずに新しい蹂躙に及んでいただろう。
俺は力を保ったまま、瞬に翻弄され続けていた。
くだらないことばかり、俺は大人になっていた。





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