「キスして、氷河」

ゆったりと目を閉じて、俺の愛撫と熱に酔っているような瞬に、求められたものを与えてやる。
俺は、そして、泣きたい気分になった。






昔、当たり前のように、瞬を我が物にしていた時、瞬が俺にキスひとつでも求めたことがあっただろうか。
俺はいつも、瞬を自分のものにすることに夢中で、ただただ欲しがるばかりで、瞬に何かを与えてやったことなどなかった。
瞬が俺に何かを欲しいと言うこともなかった。
俺は、瞬に、そんなことを言う余裕も与えなかった。

今、瞬を自分の手にしている男は、おそらく、瞬のために瞬を愛してやってるんだろう。だから、瞬は、こんなことを言えるようになった。

切なさと嫉妬が、俺を苛む。
どうして俺は――俺と瞬は、あんなにも若い時に出会ってしまったんだろう。

あんなにも――自分のことしか考えられない時代に――。



いや、違う――。
愚かだったのは、自分のことしか考えられずにいたのは、俺の方だけだった。

瞬は俺のことだけを考えていてくれた。

瞬は。
瞬だけが。


だから、これは、俺への当然の罰なんだ。





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