「瞬、俺はおまえが好きだ」

数瞬間ためらってから、紫龍は意を決して、その言葉を瞬に告げた。

受け入れてもらえない告白なのだとしても、だからといって、それはみじめなものではないのだろう。
今は――今の紫龍には、そう思うことができた。

瞬が、明るく微笑む。
「ありがと。僕も、紫龍、好きだよ」

「そういう好きじゃない。いや、それもあるが……」

自分が、氷河に劣るはずがないと思い込んでいた。

「おまえの夢を見る。俺の……自分勝手な夢だ」

「…………」

だが、それは、根拠のない思いあがりに過ぎなかったのかもしれない。
瞬を手に入れるために、これまで瞬の真正面に立ったことすらなかった自身を、紫龍は苦く自覚した。

死んでも口にできないと思っていたこと。
言葉にしてみれば、それは大したことではなかった。


「おまえが、その一瞬で氷河を好きになったのなら、一瞬で嫌いになることもあるかもしれないだろう。その時には、俺がおまえを引き受ける」

微笑しながら告げると、瞬は、暫時、虚を突かれたような顔になった。


「瞬?」

「あ、ごめんなさい。今……僕に、もう一つ心臓があるような気がした」


――氷河に掴みあげられている心臓の他に。


「あったらよかったのにな」

そんな言葉を笑いと共に口にしてしまえる自分自身に、紫龍は少なからぬ驚きを覚えていた。






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