瞬はこれまでいつも、貧しくはあっても、その健全さと生きることへの意欲──それは、希望と呼んでいいものなのかもしれない──を放棄することはなかった。

幼くして母を失い、唯一の保護者だった父を失った上、王の不興を買っている家の者と親しく交わろうとする者も皆無という状態で、瞬には友人らしい友人もいなかった。
王の不興よりも前公爵への恩と瞬への愛着を重んじている律儀な古参の使用人たちの他には、氷河以外、瞬の許を訪れる者とてなかった。

それでも失われることのなかった瞬の生気の輝きが、生まれて初めて触れる、どこか病的な空気の中で、萎縮しきっている。

怯え、王に何を言われても、氷河の服の裾を握り締めたまま──おそらくは無意識のうちに──、瞬は、王の言葉に首を縦と横に振ることしかできずにいた。
彼にとっては異質なその場の空気に飲み込まれてしまわないようにと、瞬は必死に耐えているようだった。






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