ハーデスの手が瞬の身体に触れる。

傷付いている肌をいたわるようにそっと触れたハーデスの指先に、瞬は小さく溜め息を洩らした。
それは甘い──優しくされるのをねだるように甘い吐息で、ハーデスは瞬が求める通りの愛撫を与え始めた。

その手が、瞬の肩に触れ、腕に触れ、胸をなぞり、やがて脚に至る。
ハーデスの愛撫に促されて、瞬は素直に身体を開き始めていた。

「いい子だ、そのまま──」
内腿を焦らすように撫でていた手を少し下に移動させ、ハーデスは瞬の膝の後ろをすくい上げるようにして持ち上げた。

「あっ……!」
膝を立てさせられた瞬は、これまで、そんなふうにされた後に必ず為されてきた行為の痛みを思い出したのか、怯えたような声をあげた。

「大丈夫、乱暴にはしないから」
怯える子供をあやすように、ハーデスは瞬の身体の中心に手を伸ばした。
それまで少しずつ上気してきていた瞬の頬に、さっと赤味が増す。

「そのまま、目を閉じているんだ」
ハーデスが瞬の耳許に囁く声は、決して氷河のそれには似ていない。
「これは君の騎士殿の手だ。騎士殿の胸、腕、脚──怖いことなどないだろう?」
だが、その全てに、瞬は素直に頷いてみせた。

「少し……いたずらをするよ」
指を、瞬の中に忍び込ませる。
びくりと身体を震わせて息を止めた瞬は、しばらく息を詰めたまま、自分の中で蠢くその器用なものがもたらす感触に反応を示すことを耐えていた。

いつまでも耐え切れるはずもないものに抵抗するのを諦め、やがて、瞬が小さく長く息を吐き出す。
抵抗をやめて素直になった途端に、瞬の身体は小刻みに震え始めた。
喉の奥から小さな吃音めいた声が洩れ出し、やがて、それは繰り返される喘ぎになった。

少し腰が浮きかけている。
瞬の身体は、優しい愛撫だけでは物足りない状態になってきているようだった。
ハーデスの指の刺激をもっと奥に感じようとして腰を捩り始めた瞬を、ハーデスはキスで制した。

「焦らないで。君は今まで乱暴にされすぎたせいで、とても傷付いている。時間をかけた方がいい。君の騎士殿は、君がとても大切だから、ためらってるんだ。自分が君を傷付けてしまうんじゃないかと」

ハーデスの漆黒の髪は、瞬の閉じられた瞳の奥では金色に輝いている。
「平気……」
瞬は、堅く目を閉じたまま、ハーデスの髪と頬に腕を伸ばした。
「氷河なら、平気……」

「そうだな。だが……」

今以上の何かを求めて幼い誘惑を仕掛けてくる瞬に、ハーデスはためらいを覚えた。
王のように、ただ力を振るうだけの支配者にはなりたくない。
だが、このまま氷河の代替物として瞬を自分のものにするのには、プライドが邪魔をする。


ハーデスは、横目でちらりと王の様子を盗み見た。

王は、“自分”の下で切なげに身悶えている瞬の姿に言葉を失っている氷河の横顔を楽しそうに眺めていた。
そして、王は、ハーデスの視線に気付くと、冷たい北叟笑みを投げかけてきた。






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