氷河は、瞬きすることもできずに、瞬が自分を受け入れる様を見詰めていた。

“氷河”を受け入れた瞬の胸が大きく上下し、少しずつ息が整い、そしてそのまま疲れたように眠ってしまうのを。


ハーデスの言う通りだった。
本当なら自分が、瞬をそうしたかった。
瞬の屈託のない笑顔や、自分にすがってくる清潔な手を目にするたび、いつも無理にその思いを抑えつけていた。

だが、仮に自分が力や身分を有していたとしても、その思いを口にするようなことはしなかったはずだった。
たとえば、自分が、他の誰にも膝を折る必要のない王のような絶対権力者だったとしても、瞬を自分の欲望で汚そうなどとは絶対に考えなかったはずだった。

瞬が、それを望むのでない限り。


それを──決して受け入れてもらえないものだと思っていたものを──、こんなふうに受け入れられた時、人はどうすれば──どう感じれば──いいものなのだろう。

喜ぶことはできない。
憤ることもできない。

自分の感情をどういう方向に働かせればいいのかが、氷河にはまるでわからなかった。






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