重臣たちや招聘された学者たちの意見は当たり障りのないものだった。 曰く、どちらも甲乙つけ難く、王の意思に委ねるというもの。 そして、当の王は、王子がふたりいてもいいのではないかと言い出した。 王は本当は、瞬とハーデスのどちらかを継承者にすることを決めていたのかもしれない。 が、瞬が年少を理由に辞退する旨を告げた途端に、王はそんなことを言い出したのである。 ここで、瞬を退けて、瞬が宮廷から遠ざかるのを防ごうとしたのかもしれなかった。 重臣たちは、王はまだ壮健なのだから、決定は先に延ばしても構わないだろうと、王の意見に同意した。 2つの陣営に分かれて争い事が起きる懸念も、公爵家の非力と瞬の控えめな性格からしてありえないと判断したのかもしれない。 王の隣りにいる王妃は無言。 ハーデスは、所詮祭りでの戯れ事と考えているのか、平然としていた――しているように見えた。 王の玉座の前で、瞬だけが、自らの辞意が受け入れられないことに当惑していた。 「では、異例のことですが、お二人に宣誓の杯を――」 王の意向が何事にも優先されることを承知している侍従長が、瞬の異議など聞かなかったような態度で、式次第を進めようとする。 「あ……」 その場にいる全ての人にすっかり無視された格好になった瞬が、再度、王に向かって辞意を訴えようとした時、瞬の隣りに立っていたハーデスが、瞬に耳打ちしてきた。 「公爵殿、騎士殿のところに行きなさい」 「え?」 「いいから、今すぐ」 否応を言わせないその口調に一、二歩後ずさり、次の瞬間、瞬は、何かに追い立てられるようにして、選定場の末席にいた氷河のところに駆け出していた。 「瞬様?」 突然、自分の許に駆けてきた瞬の身体を、氷河が、少々の驚きと共に受けとめる。 「ハーデスが氷河のとこに行けって」 「ハーデスが?」 瞬の説明を聞いた氷河が最初に思い出したのは、 『王を殺すのは私だ』 ――という、ハーデスの言葉だった。 |