冷たいに違いないと思っていた氷河の肌は、案に相違して、熱かった。
生活感のないその部屋に寒さみたいなものを感じていた僕には、氷河の身体の持つ熱がひどく心地良かった。

何をされていても、氷河の視線を感じた。
キスされている時にも、首筋や胸や脚に愛撫を加えられている時にも。

氷河がとても綺麗だから、彼に何をされても嫌悪感を覚えなかった――というところが、僕の中にはあったと思う。
でなかったら、同性に身体のあちこちに触れられたり舐められたりすることは、到底我慢できる行為じゃない。
でも、氷河のそれは、とっても心地良かった。

――氷河の指や唇は優しかった。
僕の五感をじわじわと追い詰めていくような、身体の感覚を少しずつ煽っていくような愛撫は、おそらく巧みなものなんだろう。
比較するものを知らない僕には、よくわからなかったけど。

でも、僕にそんな愛撫を繰り返す氷河の身体は熱い。
身体を重ねているんだから、どうしたって、それはわかる。
氷河のそれは、最初からたぎっていた。

どうしてこんなふうでいる自分を抑えて、僕を愛撫してなんかいられるんだろうとさえ、僕は思った。
氷河の愛撫が心地良かったから、それを中断されるのが嫌で、僕はそれを口にはしなかったけど。

あの長くて綺麗な指が僕の中に入ってきて、僕の中で蠢く。
僕の身体の芯に、ぞくりとする感覚が生まれた。

そして、僕は、氷河が僕に何をするつもりなのかを初めて理解した。
つまり、氷河が僕を気持ち良くするだけで終わるつもりなんかないってこと。
その時までの優しい愛撫やキスは、その代償としてのサービスでしかないんだってこと。

それでもいいと、僕は思った。
自分の身体の中を蹂躙されているのに、僕はそれが気持ちよかったから。
むしろ焦れていた。
氷河の冷静さに。

早く、氷河も、普通の男がそうするみたいに乱れてくれないものかと、僕は願った。
その様を見たいと思った。

――その時、僕は、まだ無知で呑気な子供だったんだ。





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