自分が何度エクスタシーに達したのか、僕は覚えていない。
それは、男の達し方じゃなく、女のそれとも違っていただろう。
氷河は、それを僕の中に吐き出すごとに、一時的にでも快楽の波が引くんだから、まだ正気に戻る時間もあっただろうけど、でも、僕は――要するに、いきっぱなし。

快感を感じているのは僕の身体のはずなのに、僕は、自分の身体を見失ったような感覚に捕らわれていた。
自分の身体のない僕は、快楽そのもので、『気持ちいい』なんて生易しい感覚は、とっくに通り過ぎていた。

セックスするたびに、人がこんな感覚に支配されるものなら、確かにそれは“いこと”じゃないだろう。
それを罪としたキリスト教の教えは正しいのかもしれない。
その時、僕の神は、氷河だった。


そして、僕の神は――多分、僕の乱れ方に呆れていたに違いない。
誰かと肌を合わせたのは、これが初めてだって言ったところで、きっと氷河は信じてくれなかったろう。

でも、それは、氷河のあの目――あの青い瞳のせいだ。

あの眼差しに、出会った時から愛撫され続けていたんだ、僕は。
会っていない時にも、ずっと。
出会う以前からずっと。

そんな気がする。
そう思わないことには――僕は普通じゃなかった。





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