「そんなの信じられない……。氷河は、僕の目の前で死んだ。確かに死んでた。だいいち、物理的にありえないよ。氷河は死んだんでしょ。身体を焼かれたこともあるんでしょ。じゃあ、氷河の新しい身体はいったいどこから生まれてくるの!」

おそらく、僕に加えられた氷河の冷酷と侮辱と愛のなさを否定するために――僕は氷河に反駁した。

「身体はどこから、だと? 神はどこから来たのか、人の心はどこで生まれるのか、そして、どうやってこの身体の中に入り込むのか、教えてほしいのは俺の方だ」

氷河は、僕の悲しみに気付いていない。

「キアラへの未練が、それを生むんだ」

彼は気付いていなかった。

「どうして……どうして、そんなことを僕に言ってしまうの……言ってしまえるの……」
僕が責めるように尋ねたその言葉の意味さえ、氷河は理解してくれなかった。

「君が信じないように、他の誰も、こんな話は信じないだろうからな。――今日、君に出会った時、死んでみせるくらいでは、君は俺のことを忘れてしまえないのかと思った。忘れられないのなら、嫌ってしまうのがいい。真実の死を手に入れるために君を利用した不誠実な男など」

そんな殊勝なことを言って、言葉だけで自分を貶めてみせて、だけど氷河は、僕が悲しい訳に少しも気付いてくれていなかった。





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