『別に。好きでやっていることだからな』 『自分より弱いものに対して絶対的優位に立ち、その断末魔の声を聞くのは心地良い。自分の強さと力を感じ、信じられる。自分が生きているんだってことを感じられるし、自分が生きていることを幸福だと思うこともできるな』 『おまえはそれでいいじゃないか。おまえがそんなふうに優しい分、俺みたいに人の血を見るのが好きな人間がいて、俺を満足させるために、おまえはおまえの分の敵を俺にまわしてくれているわけだ』 『持ちつ持たれつってことだ』 ――これが、俺のこの言葉は全部、瞬の真実でいい! 瞬が穢れる必要などないのだ! そう、瞬は、人を傷付けるのを嫌っている。 人間はもっと優しくなれるはず、愛し合って生きていけるはず。 そう、信じてる。 そう俺も、信じていたから。 だから、俺は、それで――そう信じる彼を、それを守るため闘い、自らが傷つき倒れようとも構わない! そして、瞬が、そんな俺を恐れ気味悪がろうとも構わない! 「おまえなぁ、俺たちはおまえのこと心配して言ってるんだぞ! 今からでも、人を傷付けるのは嫌だって、瞬に言え。きっと、瞬は喜ぶさ。おまえが殺人狂なんかじゃないって知ったら」 ――俺だけならともかく、瞬さえも馬鹿にしている―― 「そして、自分の敵を自分で片付けなければならなくなって、瞬はまた泣くのか? 俺はまた、そんな瞬を見なきゃならないのか? 冗談じゃないぞ! 俺が勝手にしてることに口出しは無用だ!」 これ以上の会話に意味は無い! 星矢たちに言葉を叩きつけるようにそう言って、俺はラウンジから出るために扉へ向かう。 少し開いたその扉に手を掛け勢いよく開ける。 扉向こうに人がいることも気がつかずに。 「瞬……」 その場で動けず硬直した彼がいた。 俺の驚きの視線に、瞬は泣きそうな顔を向け、ラウンジ内の会話が聞かれていたことを悟った。 |