それは文字どうりの口封じ。
驚愕した瞬は、なんとか氷河を押しのけようと足掻いてみる。しかしそれは徒労に終わり、手と顎を取られたまま床に横たえられる結果となる。
いい加減、肺の中の酸素も底を尽いて苦しくなってきた。
氷河がそれに気付いて一度離れて瞬の呼吸の整うのをそのままの体制で待つ。
「ちょ、やめ、」
残念ながらしゃべらせる余裕を与えるつもりはないらしい。
それどころかしゃべり途中の為に半開きになっていた唇に氷河の舌先が割って入ってきた。口内を丹念に舌でなぞられてゆく。
生まれて初めての感覚に気持ちが追いつかない。
―や、だ、なんか力がぬけていく、、―
不意に唇が自由になったかと思うと耳たぶに先程と同じ感触を感じて瞬はもうなにがなにやらわからなくなってきていた。
―思考がまとまらない。 僕、どうなっちゃうんだろう、、、―
そう思うと不本意ながらも目が潤んでくる。
そしてすぐさまそれに気付いた氷河の唇によって拭われる。頭の芯の部分がぼうっとしてきて、熱を持ち始めた。
―僕が僕でなくなっちゃう!―

瞬が未知との遭遇を体験している一方で氷河ははっきりとした目的意識を持って両の手を瞬の胸に置いた。
そこで袂を掴むと一気に左右に広げていく。
着物の前がはだけられて肌がさらされる。
「、、、、、、。」
ここで、氷河は思わず息を呑んだ。
薄暗い室内で瞬の体が白く、うきあがってみえる。
無意識のうちに氷河は瞬の身体の線を指でなぞりはじめていた。
氷河の指が新しい領域に踏み込む度に瞬の心臓は跳びあがり、背中のあたりがぞくぞくする。知らず知らず口から悲鳴にも似た声が漏れて堰きとめようがなくなってきていた。
「ん、、、、 っ、、あぁ、、、!、、、、」
それに気付いた瞬が手を口にもっていこうとするがそれよりも素早く氷河の腕に遮られて、喘ぎを止めることは叶わない。
「聞かせろ、もっと。」
耳に触れるくらいの距離で、熱っぽい吐息が耳にかかって、
それだけなのに、瞬は脱力していった。






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