「陛下と呼ぶのに抵抗があるのなら、氷河でいいぞ、瞬」 昨日まで敵だった国の少年の裸身をかき抱きながら、王は――氷河は――そう告げた。 瞬は、氷河に何を問われても、決して口をきこうとしなかった。 おかげで、氷河は、少年の名を、滅んだ国の宰相から聞きださなければならなかった。 「王のご寵愛を受けるなど、あまりに畏れ多くて、言葉もないのでしょう」 宰相はそう言っていたが、我が身が故国を侵略した男のものになることを、瞬が喜んでいない事実は、そんな言葉で言い繕えるものではなかった。 己れの立場をわきまえているのか、瞬は、自分の身体の中に忍び込んでくる氷河の指にも舌にも、あからさまに逆らいはしなかった。 だが、瞬が、それを愛撫ではなく屈辱と受けとめていることは、きつく噛み締められたその唇から、容易に見てとれる。 氷河は、だが、瞬のその様子に気分を害したりはしなかった。 瞬には、氷河の国の侵略行為のために失ったものがあったのかもしれないし、もしかしたら、それは彼の愛していた者たちだったのかもしれない。 その敵国の王に、自ら望んだわけでもないのに身体を自由にされる行為が快いものであるはずがないのだ。 それがわかっていても、氷河は、瞬の身体を押し開き、その中に彼自身を突き立てた。 心を手に入れるためになら、これから幾らでも時間をかけることができる。 氷河は、今は少しでも早く、瞬が自分のものだという印を瞬の身体に刻みつけてしまいたかったのである。 無言で流される瞬の涙を、幾度もその唇で受けとめながら、氷河は瞬を我がものにした。 |