一度自分のものにしてしまえば、瞬は何らかの反応を示すようになるだろうと、氷河は思っていた。
その心の中にあるものを、自分を支配した男にぶつけてくるだろう――と。

それが冷たい拒絶や激しい抵抗なら、瞬の心を和らげるために努めればいいのだし、瞬の示すものが諦めであったならば、新しい希望を与えてやればいい――そう氷河は考えていたのである。


しかし、瞬は、氷河に何もしなかった。
どんな反応も示さなかった。
呪詛の言葉を口にすることも、あるいは氷河を避けてみせることも。

氷河を惹きつけた瞬の瞳は聡明そうで、彼が何も考えていないはずはなかったのだが、瞬は、氷河の前で口を閉ざすばかりだった。

夜を重ねるにつれ、瞬の嗚咽は喘ぎに変わり、氷河に触れられるだけで、その意思に関わりなく、瞬の身体は氷河の前に開かれるようになっていったのだが、それでも瞬は、決してその心を氷河に示してみせようとはしなかったのである。


「瞬、何か言ってくれ」
氷河が求めても、瞬はただ、堅く目を閉じ、唇を噛み締めるだけである。

瞬の唇が開かれるのは、氷河が口付けを交わすためにその唇をこじ開ける時と、氷河に貫かれ揺さぶられて息を荒げる時だけだった。

氷河が彼の激情を瞬の中で静めると、瞬の唇はすぐにまた閉じられる。
夜ごと氷河に変えられていく自身の身体を嘆く様すら、瞬は表に出さなかった。

そして、笑わなかった。





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