氷河の不機嫌は続いていた。
それは瞬のせいなのだから、当然の帰結として、瞬は氷河の不機嫌を自身で受けとめることになる。


「もうあの女に構うな」
「氷河……でも、絵梨衣さんは――」
「構うな。約束しろ。でないと」

氷河はもちろん、最も有効に瞬の翻心を促せる場で、瞬の説得(?)に及んだ。

「この先をしてやらん」
「あ……」

熱くなった身体を、突然シーツの上に打ち捨てられて、瞬の身体は戸惑った。
「氷河……っ!」

瞬の懇願にも関わらず、氷河は瞬に触れようともしない。
「さあ、もうあの女には構わないと言え」

「氷河……氷河……っ!」
出口を奪われて逆巻いているような体内の奔流に苛まれながら、瞬が、涙ながらに氷河に訴える。

「氷河、お願い……意地悪しないで……!」
それでも瞬は、その短い一言を決して口にしようとはしなかった。

「瞬、どうして、そう強情なんだ」
「氷河っ、助けて……っ!」
「…………」

なぜ瞬が、そんな簡単な約束一つを自分に与えてくれないのかが、氷河にはどうしてもわからなかったのである。
いずれにしても、氷河自身、それ以上の抑制は無理だった。

いつになく乱暴に、瞬の中に入っていく。

限度を越えて焦らされていた瞬の身体は、悲鳴をあげて氷河に絡みついていった。






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