その夜。
いつものように瞬の部屋にやってきた氷河国王は、そこにいる瞬の様子がいつもと違うのに気付いて、ひどく取り乱してしまいました。

なにしろ、ベッドの上に座り込んでいる瞬は、空気の服しか身に着けていなかったのです。

「な……なんて格好をしてるんだ、瞬!」
氷河国王の心臓は、瞬のむき出しの白い肩にどきどきです。

「なんて格好……って?」
「ふ……服を着てないじゃないかっ!」

たとえほんの一瞬でも、瞬がついにその気になってくれたかと期待した氷河国王は、はっきり言って大馬鹿者です。

「…………」
氷河のその言葉を聞いた、瞬は瞳を大きく見開き、そして、やがて、その瞼を力無く伏せてしまいました。

「瞬?」
「僕、あの機織り屋さんたちが作った服を着てるんです。今日、兄さんが持ってきてくれたんです」

「……!」
瞬の肩だの胸だのに取り乱して、自分がとんでもないポカをしでかしてしまったことに、氷河国王は、この段になって、やっと気付きました。

「王様、見えてないんですか……?」
「……う……」
「王様、あんなに優しかったのに、悪い人だったんですか !? 」

泣きそうな目をして訴えてくる瞬の前で、氷河国王は、咄嗟に返す言葉を見つけることができなかったのです。
氷河国王は、一輝の計略にまんまとハマった自分の迂闊さに臍を噛んでいました。

けれど、せっかく手に入れかけた瞬の信頼と尊敬を、こんなことで失うわけにはいきません。
氷河国王は、ここは、どんな詭弁を弄してでも乗り切らなければなりませんでした。





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